好きなら全力投球

アイドルとか舞台とかオタクとかのはなし

ずっと推してきた人が一番じゃないかもしれないと思ったとき

わたしは、その人を推しはじめて10年ほどになる。
その人はアイドルのような歌手のような声優のような(知名度的には声優が一番上だと思うけど本人はシンガーソングライターを自称しているのでそこを尊重したいと思っている)人だ。
はじめはCDを買ったりしていただけだったのでオタクというほどではなかったが、年に1回必ずツアーに参加するようになり、1回のツアーに複数回参加するようになり、接触イベントに通うようになり、推しに顔を覚えてもらえるようになった。
わたしの青春はその人と共にあると言っても過言ではない。年数を数えるとき「何年生のときにあのツアーに行ったからあれは何年前」というカウントをしてしまうくらい。
部屋には常に2枚以上のポスターが貼ってあり、遊びに来る友人の間ではすっかり有名人。わたしがその人のイベントに行くと言うと、「彼氏とデート」と言われて冗談半分、暖かく見守られ、延々と気持ち悪いテンションで話す感想を聞いてもらっていた。

そんな「わたしのすべて」と言えるような人がもしかしたらイチオシではないのかもしれない、と感じてしまったのは、新しい推しができたからだ。

新しい推しは所謂若手俳優で(年齢的に若手とくくるのかは微妙だが)、2.5次元舞台に出ていたのがきっかけで知った。
その人はその作品でわたしが一番好きなキャラクターを演じており、はじめからかなり注目していた。
はじめはやはり二次元との差を感じて、そこはあのキャラならもっとこうだろう、ここはすごく似てるけどここは違う、なんて多少の不満もあった。
しかし、人となりもあって、1年間見続けた結果、かなり好きになっていたようだ。
(その人自体は作品に3年関わっていたが、わたしがド新規なため見ていたのは1年)

それを自覚したのは、その人がその作品を卒業する、と知ったとき。薄々感じてはいたが、ハッキリと次には出ないことが発表されて泣いた。そんなことで泣くなんて、自分でも信じられなかった。
別にその人が死んだわけではないし、もちろんキャラも死んでない。芸能界を引退したわけではないのだから今後も見ることはできる。
それでも、その人が演じるキャラクターがもう見られないのだと思ったら、数日の間はふと思い出して泣き出してしまうくらいにはショックだった。
ああ、こんなに好きになっていたのか、とはっきりと自覚した出来事だった。

それでも、本当にその人が好きなのか、ただその人が演じるキャラクターが好きなのかは自分でもよくわかっていなかった。
その時点で「その人=そのキャラ」で、わたしの中ではあまり区別がなかった。

わたしが本当に好きなのは人なのかキャラなのか、確かめるつもりでその人が出演するオリジナル舞台を見に行くことにした。
今までトキメキをくれたお礼のつもりで、少し高い良席を買った。


結果、わたしはその人が大好きになってしまったのだという事実を確認して帰ることになった。

舞台でキラキラと輝く彼を思い出しては胸が高鳴った。
帰りの電車の中でファンクラブの入会手続きをした。

誰かを推す理由は「トキメキ」だけではないと思う。でも、トキメキが大部分を占めるのも事実ではないだろうか。
元々の推しに対して、わたしは今でもときめいているのだろうか?少なくとも今、舞台を思い出したときのトキメキと、前回ツアーに行ったときのトキメキを比べてみたら…。
最近、接触イベントにも緊張しなくなってきている。正直、自分のその心境の変化が悲しい。
推しとはいつまでも初めて会ったときの緊張感を持って接したいと思っていたから。

だらだらと書いてしまったが、まだ自分の心がよくわからない。
たぶん、次のイベントが発表されたとき、自分がどの程度行きたいと思うのか、それで計れるのではないかと思う。


推し変する人はどのような心境なんだろうか。
わたしは10年間同じ人を見続けてしまったために、他の人に自分の気持ちがいってしまうのがものすごく怖い。
怖いから、という理由で推しにしがみつくのも嫌だから、しっかりと自分と向き合って、今後を考えていきたいと思う。